補習校PTA・先生

 プノンペン補習授業校の先生として

教師アドバイザー 1年生担任 浦田 富貴美

 2010年4月から1年生の担任教師として補習授業校に関わらせてもらって、もうすぐ1年が経ちます。また、教師の経験があることから、教師アドバイザーとしても先生方に関わらせてもらいました。
 補習授業校の先生方は、普段は別の仕事をされていたりボランティアをされていたりと様々です。私の場合、月曜日から金曜日までは日本の教育関係のNGOで調整員として働いています。カンボジア事務所には、日本人は私一人のため会計からスタッフマネージメントまで全ての業務を調整しなければいけません。また、週に1~2回程度、朝早くから地方へ出張にも行きます。さらに、月曜日から木曜日の夕方6時から7時まで、プノンペン大学日本語学科に学ぶ大学生に日本語を教えています。以前は、金曜日も教えていましたが、補習授業校に勤め始めてから事前の教材準備が必要なため、金曜日は日本語を教えるのをお休みさせてもらうようにしました。という感じで、かなりハードな日々の中で補習授業校の先生として働かせてもらっています。それでも、毎週土曜日に元気いっぱいの1年生の子どもたちの笑顔を見ると、「よし、頑張ろう!」と思うことができます。
 私の場合、大学を卒業後、なりたかった福岡県の公立小学校の先生となることができ、数年経験を積んでから日本人学校などに行ってみたいと考えていました。そのため、日本での経験を生かして、今、こうしてプノンペン補習授業校に関わらせてもらっていることにとても感謝しています。
 現在、運営資金が十分でない補習授業校では、保護者の皆さん方がボランティアで役員として運営に携わってくださっています。「わが子のため」とは言え、かなり献身的に関わってくださっている姿には頭が下がります。
 今後将来的にカンボジアにもたくさんの日系企業が入って来て、補習校のニーズがさらに広がり、運営資金も十分な補習校運営をできることを願っています。
 補習校では、子どもが大好きで、やる気のある先生を募集しています!!


 プノンペンの補習校に通って

後藤 哲司

 学齢期の子どもがいる親として、海外生活で心配なのはやはり医療事情と教育事情である。ここプノンペンではありがたいことに日本人補習校がある。
 補習校の運営は、熱心な保護者、長く補習校に通わせているため、「次はあの人の番かな」という周りのプレッシャーに耐えきれない保護者などが役員になり、中心になって運営している。
 一昨年の11月にここプノンペン補習校に通い始めたが、すぐに、「来年度(日本の学校なんで4月から始まる)の役員は何しますか」という声がかかった。まだまだ新参者なので恐れ多く遠慮していたが、子ども2人通わせているというプレッシャー、頼まれると厭といえない調子のりの性格から、保護者会長を引き受けることとなった。保護者会長というと大層な肩書きだが、実際の仕事は土曜当番の割り当てと年2回の保護者会開催、その他運営のお手伝いということであった。
 土曜日の朝は8時前に登校。子どもらを送り届け、土曜当番が来ているのを確認すればもう、とりあえず用事もないはずなのだが、わざわざ来たし、他の事務局長、教務、先生方が忙しいそうにしているし、さびしがりやなんで、そのまま残ってお手伝いをしていた。
 プノンペンの補習校に通う生徒は
(1)日本の学校に戻ることを前提に補習教育を行う
(2)国際社会を渡り歩くので英語がメインだけど、日本の教育を少しでも身につけたい、(3)カンボジアに住むので英語、クメール語がメインだけど、日本人として日本語の読み書きもできるように
 という大きく3タイプに分かれる。本来の補習校の設立趣旨は(1)なのだろうが、(2)と(3)の方が多く通うなかで、どのように補習校の授業形態を工夫していくか、両立していくかが大きな課題である。また、それぞれの家庭で補習校に関する期待度が違うなかで、どこまでそれに応えれるか、応える必要があるかも重要なテーマだと思う。
 補習校の開校日数は37日間。小2の場合、日本の小学校と比較すると国語で約250授業数、算数では約125授業数の差が出る。つまり補習校の場合、1年間通わせても、日本の小学校の1カ月分も満たない授業数しかない。そういった環境のなかで、単に補習校に子どもを通わせることを目的とするのではなく、補習校で自分たち親が子どもに何を学ばせたいか、経験させたいかを個々の家庭が考えて、取り組んでいくことが大事だと思う。
 プノンペン滞在は1年少しと短い期間だったが、我が子が補習校に通うことができ、また、他の保護者の方、子どもたちと一緒に過ごすことができたのは良い思い出だった。とりあえず2月末で日本に戻るが、これらの経験を活かしながら、我が子の教育を進めていければと考えている。
 最後になったが、プノンペンでお世話になった皆様ありがとうございました。
 では、また、どこかで。


 プノンペン補習授業校から

2011年度 事務局長 藤原広人

 今をさかのぼること11年前、2001年4月に16名の児童生徒でスタートしたプノンペン補習校は、現在、児童生徒総数54名 (幼稚部、小学、中学部含む)を数えます。日本の平均的な学校規模からみると、それでもまだ小規模といえるかもしれませんが、在校生のバックグラウンドは実に多様です。たとえばカンボジアでの滞在期間ひとつをとってみても、日系企業や大使館、JICA勤務の親の転勤に伴い、数年間の期限付きでカンボジアに滞在するケースのほか、両親いずれかがクメール人でカンボジアに永住を予定しているケース、あるいはカンボジアと日本を一定期間ごとに行き来するケースなど様々であり、また、日常家庭で使用している言語もクメール語や英語、日本語など様々です。
 では、こうした多様な背景の子どもたちを結ぶ補習校の大きな一つの特徴は何でしょうか?それは何といっても言葉、「日本語」だと思います。
 言葉は人のアイデンティティを形成し、物を考える際の重要な枠組みを提供します。これから先、世界の人々がますます容易に行き来できるようになり、情報がますます容易に手に入るようになっても、自らの文化的なアイデンティティをしっかりと保ち、その基礎に立って普遍的な世界に出て行くことが重要であることに変わりはないでしょう。その意味で、日本から離れたカンボジアの地にありながら、「日本語」という共有財産を育み、子どもたちが楽しみながら学び・遊ぶことのできる補習校の存在は、なんと大きな恵みでしょうか。
 実は、プノンペン補習校には、もう一つ大きな特徴があります。それは校歌の作成から学校運営にいたるまで、すべてが手作りである点です。補習校では教師や各役員とともに、保護者が様々な形でボランティアとして積極的に関わり学校の運営を支えてきました。またすでに補習校を巣立った卒業生が、ボランティアとして、毎年秋に開催される「盆踊り大会」での振付指導を初め、折に触れ多くの手伝いをしてくれています。カリキュラムやクラス編成に関しても、例えば最近では、読書タイムや中学部の社会科を中心とした総合学習の導入、日本語能力に応じた複式授業の導入など、常に新たな試みを行ってきました。こうした試みは、試行錯誤の部分が多いのですが、常に変化するニーズに対応しようとする、補習校の手作りの伝統の表れだと思います。
 設立以来これまで、多くの子どもたちが、プノンペン補習校で学び・巣立ってゆきました。また多くの教職員・保護者がその運営にかかわってこられました。こうした一人一人が育んできた素晴らしい財産を受け継ぎつつ、補習校が今後益々発展していく事を願ってやみません。