再生への深呼吸

Jean-Jacques Bernatas

 人生においての最初の呼吸と最後の呼吸は、それぞれ人の誕生と生を意味する非常に重要なものです。また、私たちは一日に2500回も呼吸を繰り返していますが、無意識の動きのため、その重要性について考えられる方はあまりいらっしゃらないのではないでしょうか?
 呼吸器系の病気である慢性閉塞性肺疾患とは、直近2年間に最低3ヶ月間ほとんど毎日咳や痰がある状態を指します。
 慢性閉塞性肺疾患はこの数十年間に大きな問題として認識されるようになりました。1950年代には圧倒的に男性に多い疾患で、死因の上位10位にも入っていませんでしたが、現在は全世界で5番目に多い死因となり、米国においては同疾患の51%を女性が占めるようになりました。
 50年代は公衆衛生論において歴史的な曲がり角と言われていますが、これは新しい統計手段として疫学に影響を及ぼす大きな要因が記述され、肺疾患に喫煙が大きな影響を及ぼす確固たる証拠が提示されるようになったことによるものです。
 喫煙は慢性閉塞性肺疾患の主なリスク要因であり、ワースト慢性疾患のひとつとなっています。この疾患はたちまち人を死に至らしめるのではなく、時間をかけて狡猾にじわじわと病変を引き起こし取り返しのつかない障害、永続的な息切れを加速させ呼吸不全を引き起こすところにその怖さがあります。
 もちろん、現在広く行われている同疾患管理には効果があり、治療により疾患進行の速度を緩めることができます。しかし、治療も速度を緩めるだけで、繰り返される重度の肺感染は体重減少、筋力低下、重篤な心臓疾患、呼吸器不全を起こし、ついには若死(引き返すことのできない道)に至ることに変わりはありません。
 早期発見のための早目の検診や、先に述べたような症状がある方は医師に相談されることとお勧めしますが、一番大切なのは根本的な原因を知りそれを未然に防ぐことと言えます。つまりは喫煙を止め、おいしい空気をそのまま吸うことが、最大の予防になるのです。


Dr. Jean-Jacques Bernatas(JJバルナタス医師、フランス人)
 インターナショナルSOSプノンペンクリニック、医療責任者。20年以上の臨床経験を持ち家庭医学、熱帯医学に従事。公衆衛生と予防医学の専門家でもある。