晴読雨耕 Vol. 5

安田 理裕

「会報誌その2」

 昨年の特大号に、それまで書いた駄文をまとめて載せてもらった。特大号の為、なんだかんだとページ数を割いてしまったが、さすがにあれだけの量を一度に書くのは大変だ。
 っということで、今回は予定どおり1ページにさせて頂きます。お付き合い下さい。

「冷蔵庫」

 電気の通っていない田舎へ行っても、氷が売られている。電気がなくともテレビなどは車のバッテリーで見ることができるが、さすがに冷蔵庫はない。クーラーボックスを使ってる店もあるが、最も原始的なのはコメの籾殻を使う方法である。
 家や店の敷地内の木陰に籾殻の山を作り、その中に氷の塊を埋めるだけ。それだけで数日は氷を保存できるというのだから、究極のエコである。氷を運んでくる業者もブツをムシロに巻いてくるので、そこもまたエコなのだ。
 ど田舎で飲むアイスコーヒーに籾が入っていたら、冷蔵庫の欠片と思って頂いて間違いないでしょう。
「件の冷蔵庫」

「ベターライフ」

 OECDのウェブサイトに「ベター・ライフ・インデックス」なるものがある。これはOECD各国の社会状態を様々な指標で表したもので、GDPのように経済に偏り過ぎたこれまでの社会発展の見方を人間中心のものに変えていこうという試みでもある。
 当然ここには日本のデータも出ている。これによると、日本は安全や教育、所得で高位に付けているものの、生活の満足度やワークライフバランスといったところでは散々な状況。経済的な指標と違いクリアカットな査定は難しそうだが、このデータ、なかなか鋭い。
 これをカンボジアに当てはめた場合、一体どういう結果になるのだろうか?所得や教育での評価は低くなるだろうが、農村においては、ワークライフバランスという言葉自体がナンセンスであることは間違い
ない。
 素直に見習いたいところだ。

「スカート」

 スカートの丈とGDPの成長率に関係はないのだろうか?
 経済成長につれ、女子のスカートが短くなっていくのは気のせいだろうか?

「数字」

 カンボジアの人は数字に関して実に雑であるように思う。
 「この村で地雷はいくつ見つかったの?」と聞けば、「チュラウン」と返され、村長さんに村の人口を聞くと、「五百人以上」みたいな答えだったりする。
 ただし、それで困っているのは、ノート片手に真顔でそんな質問をしている我々だけだったりするので、まあ、いいんでしょう。

「風物詩」

 バッタンバン、雨季の風物詩と言えば、ラジオおじさんだろう。
 ラジオ放送のラジオではなく、無線機という意味でのラジオだ。これを持ったおじさんが町だけでなく、なーんもないような田舎の田んぼなんかにも登場したりするのだ。
彼らがやっているのは、雨が降るかどうかの賭けごと。田舎にいるおじさんは、遠方に出て雲の動きを読み、それを町中の仲間にラジオで伝えるのがその役目だ。
 一応違法の為、詳細を知るのは難しいが、一つの説によれば、1日を3つのタームに分け、それぞれのタームについて雨が降るか降らないかを一口2ドルから賭けていくらしい。別の説では、特定の時間に特定の場所で雨が降るかどうかを賭け(特定の入れ物に雨が溜まるか否か)、その時間が近づくにつれ賭け金が随時上がっていき、当たれば賭け金を貰え、外れれば賭け金が全て没収されるとのこと。
 いずれにしても、元々は中華系の爺様達の暇つぶしだったものが、今や大金が動く立派な商売になっているのは間違いないそうだ。雨季には約8割のバッタンバン住民が一度は賭けるという話すらある。(私はその8割に入ってません。)
 この熱意が正式な気象データ収集に繋がる気配はまだない。

「ベーキングパウダーはKENJIに限るわね」
安田 理裕(やすだ まさひろ)
何の自慢にもならないが、カンボジア日本人会会員番号No. 001。バッタンバン在住。
日本人会イベントのときには不思議とプノンペンでの仕事が入ったりする。