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■このページの内容
2010年度球技大会
プノンペン補習授業校入学式
カンボジア事情 第20回「カンボジアの道路」
主婦のおしゃべり広場 第11回「娘のiCAN British International School 」
カンボジア雑記 第19回「将来のカンボジアを育む支援」
リレーエッセイ 第一回「日本でのリハビリ」



■2010年度 カンボジア日本人会 球技大会

バレーボール サーブ8連発

ドッジボール 試合開始
ソフトボール 試合開始。よろしくっす!
去る5月30日の午前に行われた「球技大会」は快晴の下で、120名の参加者が集い、 盛況のうちに無事終了しました。
今年は未就学児も楽しめる様に、との意見から、補習授業校の父兄の協力により 「ころがしドッジボール」と言う球技も加わり、「ドッジボール」「バレーボール」 「ソフトボール」の恒例球技と共に行われました。
木陰に引かれた「ころがしドッジボール」のサークルラインの中を、ボールに当たら ない様に、歓声を上げながら逃げ回る児童たち。確りとしたフォームから、狙いを定め 力強くボールを投げていた「ドッジボール」。「バレーボール」は老若男女混成チーム による6人制ゲーム。ジャンプ力は落ちてはいても、気持ちだけは学生時代に戻っておも いっきり汗を流してもらいました。「ソフトボール」では、普段から練習を積んでいる ソフトボール同好会のメンバーが主軸となり、この日はクラブをバットに持ち替えた迷選手 たちがグランドを駆け回っていました。
試合終了後には会場NISCのキャンティーンにて懇親会を催し、乾いた喉をビールで潤し、 疲れた身体を癒しながら、あれこれと豊富な話題で更なる親睦を深め合いました。
参加者の皆さん、お疲れ様でした。


ころがしドッジ ボールをよけて!
ころがしドッジ ひぇ!危ない!

跳べば大丈夫!
僕、まだ眠い・・・

当ててやる!
攻守逆転

Viva
御手打ちだけはご勘弁を!

貰った!スパイク願います!
プリマドンナ

抜けるか?
頂きま~す。

低い低い!
打ちました!!

ナイスショット!
ご馳走様です。

3塁アウト!!
本日唯一のホームラン!!



■2010年度 プノンペン補習授業校 入学式

みんなで集合写真

プノンペン補習授業校 入学式

菅野未央

去る2010年4月3日、第10回入園・入学式がプノンペン補習授業校(以下補習校) で行われました。朝からの季節外れの大雨にもかかわらず、教師、父兄が見守る 中、元気いっぱいの6名の年中さん、そして期待で胸を膨らませた9名の小学1年生 が入園・入学しました。
今年で補習校は開校10周年を迎えます。6月に行われる予定の社会見学の際に 10周年の記念行事として記念植樹を行う予定です。子供たちの心にたくさんの 思いで残るような素敵な記念行事になることを願っています。

補習校の運営は、日本人会の活動のひとつとして補習校運営委員会、教師、 保護者により成り立っています。毎週土曜日、週にたった一度の補習校ですが、 子供たちにとって日本語で日本人の友人と学び、遊べる貴重な時間となっています。

 関係者一同、それぞれが時間、労働、知恵、笑いを提供しながら園児、児童、 生徒のためにより良い補習校づくりを心がけています。今年度も引き続き プノンペン在住日本人の皆様のご理解、ご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

小学部 入学おめでとうございます

幼稚部 入園おめでとうございます


■カンボジア事情 第20回
「カンボジアの道路」
JICA 建設の品質管理強化プロジェクト 桑野 忠生

 《建設の品質管理強化プロジェクトとは》
 公共事業運輸省(MPWT)における始めてのJICAプロジェクトとして、 昨年5月よりスタート。プロジェクトの目的は、MPWT職員の能力向上を図りながら、 自国予算で実施する道路・橋梁等の建設・補修工事における品質管理機能を強化 することです。言葉で言うと簡単なのですが・・・ ワットプノンを臨む庁舎 にオフィイスを構え、日々奮闘中。

1.カンボジアの道路の状況
(1)道路の延長
 カンボジアの道路は、1号線等の一 桁ナンバーの国道が2,098km、二桁ナンバーの 国道が2,970km、三・四桁ナンバーのプロビンス道路が6,169km、他に地方道が 28,000kmあり、全国合計で39,000kmの道路網となっています。しかし、舗装済み の道路は3,200kmで、全体の8%に過ぎず、これからも当面は基本的な道路インフラ の整備が必要な状況にあります。これらのうち、国道及びプロビンス道路を MPWT(Ministry of Public Works and Transport:公共事業運輸省)及び DPWT(Department of Public Works and Transport:州公共事業運輸部) が管轄し、地方道をMRD(Ministry of Rural Development:地方開発省) が管轄としており、それぞれが建設・維持管理を行っています。

(2)代表的な国道(一桁国道)
カンボジアを代表する一桁国道は、1号線から8号線まであり、プノンペン 市を取り囲む様に、時計周りで放射状に配置されており、皆さんも通られた ことがあるかと思います。

国道1号線は、プノンペンからバベット(ベトナム国境) までの路線で、プノンペン~ネアックルンまでの区間では、 DBT(Double Bituminous Surface Treatment:簡易舗装)から本格的な AS(アスファルト)舗装へグレードアップするリハビリ工事を日本の無償支援 によって継続実施中で、現在は3期工事区間の盛土構造を構築中です。

2期工事は約1年前に竣工しましたが、まだ非常に良い状態を 維持しており、カンボジア国内で最も高品質の道路の一つだと思います(写真1)。 メコン河を越えたネアックルン~バベット間はDBSTの仕様でADBの支援で 建設されました。長年の懸案事項だった、ネアックルンにおけるメコン河架橋は、 日本の支援で現在橋梁の設計中です。

国道2号はタケオを経由してベトナム国境まで行く路線ですが、 国境寄りの約半分は日本の支援でAS化されました。


写真1 国道1号線(AS舗装)

国道3号はプノンペンとカンポットを結ぶ路線ですが、 現在、韓国の支援でラテライトからDBST舗装へのリハビリ化が進められています。

国道4号は、プノンペン~シアヌークビル間を結ぶ、 アメリカの支援でAS化された道路で、現在は、民間企業が道路メンテナンス費用 として料金徴収を行っている国内で数少ない有料道路の一つです。ビール製品や 製油等の物流・産業道路として、またキリロムやシアヌークビルへの観光道路しても 身近な路線かと思います。

国道5号線は、国道1号線とともにASIAN及びASEAN ハイウエイの第1号線に位置づけられている他、ホーチミン~プノンペン~バンコクと GMS(Greater Mekong Sub-region)を結ぶ国際物流への貢献が期待され、GSMの R1としても指定されています。現在は、まだ全線がDBSTですが、接続する 6号線の区間が既にAS化されましたので、AS化の優先順位が高い路線です。

国道6号線は、プノンペン~シエムリアップ間は、日本とADB 及びWBの支援でDBST化され、また昨年には、ポイペト~シエムリアップ間 がAS舗装化され、非常に快適で安全な道路に整備されました。
国道7号線はプノンペン~コンポンチャムまでが日本の支援 によってAS化され、500リエル札の肖像にもなっている“きずな橋”も 日本の無償支援で2001年に建設されています(写真2)。 コンポンチャム~ストントレン間はADB及び中国の支援によってDBST化が 2~5年前に竣工しましたが、竣工後の早期損傷発生が問題となっています。

国道8号線は6号線から分岐し、新設のPC長大橋を渡って ベトナム国境で7号線に合流する新たな幹線国道ですが、中国の資金支援により、 目覚ましいスピードで建設中です。


写真2 きずな橋(国道7号線)

(3)道路の舗装率
カンボジアの道路を舗装率から見ると、AS舗装化されているのは、 一桁国道全長に対してまだ35%に過ぎず、残りの65%は設計寿命が5年程度と 短い簡易舗装(DBST)のままです。今後の国土の発展に先んじて、全線の舗装を AS化する必要があります。
また、主要道路延長に対するDBSTも含めた舗装済み比率はまだ28%に 過ぎません。乾季にはラテライトを粉塵状に巻き上げ、雨季にはぬかるみになる 悪路は、周囲の住環境的にも望ましくなく、かつ経済活動を阻害する要因とも なっており、集中的な道路投資がしばらくは必要な状況にあると言えます。

写真3 チュロイチョンワ橋(日本橋)

現在の主要道路は、歴史的には、フランス植民地時代に、 設計荷重や設計交通量が現在よりも低い規格で建設され、またその後、 道路網は内戦による荒廃にさらされました。

道路整備近代化の出発点となったのは、1992年の 日本の無償支援によるチュロイチョンワ橋(カンボジア日本友好橋)の架け 替え事業(写真3)及び1993年の同じく日本の無償支援による国道6A号線 のAS舗装化事業で、内戦による20年の時間ロスを埋めるべく、引き続き 急速な勢いで道路整備が進められています。

(内戦後、最も早くカンボジアの道路インフラに支援を 表明したのが日本であったことは、今なお関係者に感謝されています。)

2.カンボジアの道路の特徴

(1)道路の機能の兼用
一般に、道路の社会的な機能について、トラフィック機能(走行)・ アクセス機能(出入り)・空間機能(市街地形成・防災)の3つの大きな 機能を果たしていると言われています。

これらはトレードオフの関係にあるので、道路ごとに 機能分離をすることが望ましいのですが、カンボジアでは、写真4の 様な光景を良く目にする様に、一桁国道ですら、これらの機能を全て 兼用しなくてはならず、残念ながら安全性や快適性などが結果的に 犠牲になっています。

写真4 道路機能の兼用
(2)ドナー工事とフォースアカウント工事
 カンボジアでは1993年以降、さまざまな外国ドナー (ADB・WB・日本・アメリカ・中国・韓国・ベトナム・タイ)が道路の リハビリに資金援助しています。ドナー工事は外国のコントラクターによって、 一定水準の品質管理が行われますが、設計やデザインもドナー間によって 異なる結果となり、基準等の不統一が生じています。これは、今後、 補修工事が必要となった際に非効率となる可能性があります。 また、近年のドナー工事に関しては、中国の圧倒的な速さと金額の支援が 突出しています。特にプレッククダムとプレックタマクの2つの長大PC橋 の建設スピードは技術力の高さをPRしています。
一方、カンボジア政府の自国道路予算は、小規模な維持補修工事を中心に 充当されており、MPWTが直営で施工も行う形式で事業を進めています (フォースアカウント工事)。これは、MPWTが事業の発注者であると 同時に、施工受注者や検査者も兼ねる必要があるため、不透明な事業形態 であり、今後は徐々に、民間のコントラクターへの外注率を高めていく 必要があると思われます。

(3)カンボジアの道路橋梁
カンボジアにおける道路の橋梁構造物については、写真5にあるような ベイリー橋と呼ばれる仮設橋が二桁国道を中心にまだかなり残っています。 過積載の問題とも関連して、落橋するケースも見受けられます。その殆ど は老朽化し、メンテナンスが必要ですが、順番にコンクリートによる永久 橋に架け替えを進めているものの、予算の制約から日常の補修には十分な 資金が投入されていません。

(4)カンボジアの道路景観
写真6は、カンボジアの道路を走っていると良く見る景観です。カンボジア を代表する樹木であるさとうやしが見渡す限り林立し、美しく、心和む 景観だと思います。また、写真6にもあるように、路側に植えられた、 多くの高い緑の木々もカンボジアの道路の走行景観を美しいものにしています。

(4)カンボジアの道路景観
写真6は、カンボジアの道路を走っていると良く見る景観です。 カンボジアを代表する樹木であるさとうやしが見渡す限り林立し、美しく、 心和む景観だと思います。

また、写真6にもあるように、路側に植えられた、 多くの高い緑の木々もカンボジアの道路の走行景観を美しいものにしています。

3.カンボジアの道路の課題

(1)より効率的な維持管理
2008年度のMPWTの道路管理予算としては、日常維持補修に 7.5百万USドル、定期維持補修に26百万USドル、緊急復旧費 1.9百万USドル、他にPRGO資金のうち24百万USドルが 橋梁架け替え等道路事業に支出されています。全体でも年間 60百万USドル程度であり、まだまだ十分な予算が確保されている という状況ではありません。


写真5 ベイリー橋(仮設橋)

写真6 さとうやしの木々

例えば、舗装路面の穴(pot hole)が発見された場合、 日本の道路管理者は、二次災害を抑止するため発生当日中に緊急で 車線規制を行い、穴埋め補修を行うのが通常ですが、カンボジアに おいては、即応する体制は整っていません。
しかし、一桁及び主要な二桁国道においては、2ヶ月ごとに定期的 な点検が行われ、その結果に基づいて、穴埋め・一部舗装打ち替え・ 大規模打ち替えなどの工法を選定し、予算の許す優先順位から補修を 実施するメンテナンスサイクルが機能し始めています。このサイクル の一層の効率化・高品質化を図ることが課題の一つです。


(2)過積載の取り締まり
過積載車の取り締まりは、官民協力して解決すべき大きな課題の ひとつです。道路の早期劣化を防ぐため、全国7か所の 主要地点にウエイステイションを建設中であり、過積載車の 重量計測と罰金徴収・行政処分等の取り締まり強化に取り 組み始めています。

(3)分散性粘土
カンボジアの道路を走っていて、写真7のような路面穴の状況 を目にすることがあるかも知れません。

これは、分散性粘土(ドラゴンホール)と言われる、 東南アジアなど一部地域に偏在する粘性土に特有の現象で、 あたかも土の一部が溶けて流れ出てしまったかのような損傷を 引き起こします。
現時点では、このような可能性のある材料を 使用しない様に精度良く見分ける手法が確定されておらず、 対策工法も含めて、カンボジアの道路における今後の課題の一つです。

写真7 分散性粘土

4.おわりに

カンボジアの経済発展に道路インフラの持つ 意味は極めて大きく、いずれ、高速道路や有料道路、そして 環状道路やITを用いた交通管制などがこの国においても実現 する日が来ることを期待しています。
しかしながら、もう少し時間はかかるでしょう。カンボジアの 道路の将来を担う技術者達がそれらの夢に向かって技術を 研さんする環境作りに少しでもこのプロジェクトが貢献 出来たら!と考えています。



■主婦のおしゃべり広場 第11回
「娘のiCAN British International School」
柏 佳子

 初めての海外赴任に伴い、6歳になる娘とカンボジアの この地に降り立ったのは、夫に遅れること約2ヶ月、昨年の8月末の ことでした。その2日後には、プノンペンに来たという感傷に浸る暇もなく、 今日ご紹介するiCAN British International School の入学の面接に娘と夫と ともに臨んでいました。

 入学面接ということで、娘ともども緊張の面持ちで臨みましたが、 簡単な質問に答えるだけで、あっさり入学の許可をもらえ、こちら としては拍子抜けでした。面接を終え、先生から「明日から水筒だけ持って、 8時までに来て下さい。」と言われました。持ち物が水筒だけなんて信じられ ませんでした。通い始めてしばらくは、筆箱ぐらいは必要だと思い、娘に 持たせていました。でも、学校で使うものは全て学校で用意してくれます。 持ち物は水筒と宿題を入れる薄いバッグだけ。ノートを持って行く必要も なければ、教科書を持って行く必要もありません。ノートに教科書と何冊も 詰め込んだ重いランドセルを小さな体に背負い通学しなければならない 日本とは大違いです。

 iCAN British International Schoolの一日は、リズム体操で始まります。 始業前の10分間程度、生徒は講堂に集まって、軽快な音楽とともに体を 動かします。欧米人の子供は、陽気で音楽が鳴り始めると自然に踊りだす ものだと勝手に思っていたのですが、先生の目を盗んで抜け出す子供も いて驚きました。リズム体操を終え、午前の授業は8時から11時半まで 続きますが、その間に日本の学校とはちょっと違うところがあります。 娘が学校に通いだして間もなく、「学校ではデザートから食べるんだよ~」 と言うので不思議に思っていたら、授業の合間にフルーツを食べる時間が あることがわかりました。勉強をする前に軽い体操をしたり、授業の合間に 糖分をとると脳の活性化に良いと聞いたことがあったので、色々と考えて いる学校だなぁと感心しました。

 教室も日本とは違い、子供たちは、4人で1つの机を使います。 机の中心には文房具類が置いてあり、それをシェアーします。 わからないことがあれば、同じ机を囲む友達がすぐに助けてくれます。 こうした配席の方が、幼い子供が互助の精神を養うには、役立つのかなぁ と勝手に考えています。また、各教室にプロジェクターが配備されており、 子供達がより理解しやすいように、視覚教材を使った説明が多く取り入れ られているようです。特に、娘を含めて英語を母国語としない子供たちに とっては、プロジェクターは大変ありがたい存在だと思います。

 日本との違いをさらに挙げれば、この学校では宿題らしい宿題はあり ません。計算ドリルや英単語のスペル暗記というような宿題はなく、 想像力や思考能力を鍛えるようなゲームのような宿題が出されます (まだYear 2レベルだからかもしれませんが)。 この宿題は、親子ですることを基本としているようで、「宿題はやったの?」 と、子供任せにはできません。

 また、インターナショナルスクールならではのイベントもあります。 昨年10月のインターナショナルデーでは、先生と保護者が協力して 各国の紹介ブースを作り、そこを子供達が訪問しました。日本のブースでは、 巻き寿司、団子、折り紙に書道と日本文化の一端を紹介しました。 特に巻き寿司と団子は、試食できたこともあり大好評でした。 このイベントをきっかけに、これまで日本のことすらあまり関心の なかった娘が、日本やその他の国々にも関心を示すようになりました。

 最近では、チャイルド・カンファレンスがありました。このイベントでは、 子供たちが、保護者にこれまで授業で学んできたことを説明してくれました。 教室に保管されている娘のノートには、これまで勉強してきたことがびっしり 書き留められていました。英語もよくわからずどんな風に学んでいるのか、 もしかしたら何も学んでないのではないかと心配していましたが、 一生懸命説明してくれる姿に、言葉はあまりわからなくても、たくさんの 事を学んでくれていると実感し、感動しました。

 最後に、通学を始めた頃は泣いていた娘が環境の異なる学校に馴染めたのも、 この学校で優しく接してくれる先生やお友達と出会えたからだと感謝して おります。娘の成長と共に今後のiCAN British International School の発展が楽しみです。



■カンボジア雑記 第19回
「将来のカンボジアを育む支援」
Educational Supporting Center "KIZUNA” 山田 隆茂

 初めて投稿をさせていただきます。2008年6月からプノンペン を中心に活動を始めたNGO-Educational Supporting Center “KIZUNA”について 今回、会報に載せていただくことになり、感謝いたします。
弊NGOは2008年6月に設立、承認を受けて10月から活動を始めた新米団体でございます。

 主たる活動は

(1)貧困県とも言えるモンドルキリ、ラタナキリ、スタン.トレン、プレアビヒア、 コッコーン、プノンペンの中学校、小学校(コッコーンのみ)の教員になるべく、 プノンペンにある養成校に毎年約260名が入学、二年間の研修。国からは一ヶ9,000 Rielのみ が支給されるが、当然足りない。この状態を少しでも改善、勉学に邁進して ほしいとのドナーの強い意思から一ヶ月15ドルの支給をしている。地方出身者は 全員が寮で自炊生活。食料などの生活物資、資金の調達に交通費を使い、実家の ある田舎を往復し勉学の時間を割いていたが、其の時間を勉学に利用できるように なった。


指導書を手にして笑顔を見せる生徒達

(2)更に、将来の小学校、中学校の教師達に自国の歴史を学び、教団に 立った時、生徒達に自信を持って、正確に自国の歴史を指導できるよう にする援助を行っている。例年3-5月にかけて約250名を三回に分散、Siem Reap に4日間のStudy Tourを実施。生徒たちの95%以上は訪問した経験がないので この研修旅行を心待ちにしている。

(3)また、成績優秀生徒三名及び校長または代行者を日本へ研修に送り、 日本国内での小学校、中学校数校を訪問し、授業風景、教師との意見交換、 教材の作り方、給食などを体験させる。帰国後は全校生徒の前で発表の 機会を作り、得た経験を共有させている。

(4)教員養成校での二年間の研修後、教師として赴任した学校を訪問、 教育にかかわる問題の情報を元研修生から聞き取る。出される問題点は 多岐にわたり、当然NGOのみの財力では解決はできないが、問題点を 共有して機会を見つけて関係先へ働きかけをしてゆく。教師用指導書の 配布も其の一つであり、本年から開始した。

(5)追加のProjectとして「Teaching English by Radio」を本年2月から 準備を始め、10月頃から全国放送を開始する計画。テストケースとして プレアビヒアー、スタン.トレン、プノンペンで各県5校を選出、 中学一年生を対象とした内容の英語教育放送を行う。放送は15分間の プログラムを週間4回であるが、各校英語教師により全体で45分の 授業とする。
テストケースとして限られた地域のみ実施するので放送および授業は 通常時間外に行う計画である。

以上


支援金配布を待つ教師の卵達


アンコールワットでの生徒たち



■元カンボジア在留邦人リレーエッセイ 第一回
「日本でのリハビリ」
プノンペン補習授業校 前主任教師 井伊 誠

 カンボジア日本人会のみなさん、こんにちは。 ひょんなことから今号より始まろうとしている(?)元日本人会会員 リレーエッセイ。第一回目の大役を仰せつかった井伊誠(いいまこと)です。

 マイナーキャラだったので、在留邦人のみなさまにはあまり知られて いないかもしれませんが、二〇〇四年九月からカンボジアで暮らし始め、 そのうち四年間は教師としてプノンペン補習授業校の運営をお手伝いして おりました。

さて、そんな私ですが、二〇一〇年四月をもちましていろいろな意味で 愛すべきカンボジアを離れ、第二の祖国日本へ旅立ちました。現在は 日本に順応するためのリハビリにどっぷり浸かった日々を送りながら、 遠く離れた第一の祖国に思いを馳せております。今回はそうした私の リハビリ生活について、少々書いてみたいと思います。

 リハビリ第一弾は気候でした。プノンペン国際空港からとび立ち、 成田に着いたのは四月二二日。一年のうちで最も気温が高くなる四月 のカンボジアから、春うららの日本へ向かうわけですから、涼しくて 快適だろうな、なんて高を括っていたところ、今にも雪が降りそうな 低温にガビン! 四月だというのになぜか吐く息は白く、周囲の人々は 真冬用のコートを羽織っている有様です。カンボジア気分を引きずった ままの半袖(もちろんmade in Cambodiaのシャツ)姿だった私に 向かう世間の視線は、なぜか妙に刺々しく感じたものです。みなさん、 心に刺を抱いてはいけませんよ。

 リハビリ第二弾は道路の舗装です。空港からリムジンバスに乗って 道路を走り始めたところ、まったくと言っていいほど車体が上下に揺 れず、車がすーっと氷上を滑っているかのよう。なんと滑らかな路面 なのでしょう! オフロードバイクに跨がってカンボジアのでこぼこ 道をかっとばすのが仕事(いや、九割は趣味だな)だった私にとっては 大変衝撃的で、思わず大興奮。

「すげえ滑らかで全然揺れないじゃん!! 四号線 (プノンペン—シアヌークビル間)も真っ青の舗装だな!」

 隣にいた同行者(元在留邦人)に
「ちょっと、うるさいからやめてよ。何が四号線よ、バカじゃないの!」
と諌められたのは言うまでもありません。

 次は道路の交通信号です。日本に戻ってから、まず自動車(とバイク) の運転免許を取得することにしました。「今さら」免許もねぇだろうという 思いもありましたが、日本のお巡りさんとカンボジアのお巡りさんを誤って 混同してしまい、「かつて」のような接し方をしてはちょっとマズいので、 ここは一つ、大人になることにしたのです。

 短期間で安いことから、新潟県のとある教習所でやっている合宿免許に 申し込みました。

 さて、路上教習第一日目のこと。信号無視のバイクや車を見かけるのが 日常茶飯事という世界の住人だったものですから、どうも信号に自分の命を 預ける気になれません。対面する信号が青だって、交差する道路からレクサス とかハマーとかが突っ込んでくるわけですから、たとえ目前の信号が青で あってもスピードを落として左右の確認をしなければなりませんよね?  みなさん。そしたら……。
「なーにやってんだよ、信号、青なんだから行けるだろ! 早く行け(新潟弁)」
 という指導員のお言葉。いや、先生あのね、そんなことは理屈では わかってるんです。ただね、図体のでかいレクサスが突っ込んでくるかも しれないじゃないですか。ハマーなんてあんなゴツい車体で赤信号を攻めて くるんですよ。バイクに二人乗りしたお兄ちゃんやお姉ちゃんも侮れませんよね?  それに先生も言ってたでしょ、何があるかわからないから常にさまざまな ことを想定した運転をしろってさ。
「いちいち、交差点でブレーキを踏むな!」
わかりましたよ、もう。ハマーに突っ込まれても知りませんからね。
「追い越しするときにクラクションならしちゃなんねえって学科でやっただろ!」
いや、先生、だって追い越すときに「プップップップップー」って クラクション連打して知らせてあげないと、追い越されたほうはびっくり仰天 じゃないですか。大型バスがピックアップトラックを追い越している最中に、 別の大型バスが二重追い越しを仕掛けるときなんか、クラクションが必要に なってくるんですよ、先生。新潟ではあまり見かけないかも知れませんけど、 私のいたところじゃ、ちっとも珍しい光景じゃありませんでしたからね。
「どーこ行くんだ、ここは日本なんだから左側通行だろ!」
そんな、急にブレーキ踏まなくたって。ちょっとくらい逆走したって、 大した問題じゃありませんよね? それに「ここは日本なんだから」って ずいぶん刺のある言い方じゃないですか。どうせ私は元在留邦人ですよ。


次号は安田理裕さんによる「ぽっちゃりにうっちゃり」です。