カンボジア法律情報 「カンボジア不動産購入時における問題点」

藪本 雄登

 カンボジアにおけるもっとも大きな問題は土地に関する紛争です。今回のテーマは土地購入に関する問題に焦点をあてたいと思います。

1 前提として、憲法第44条において、外国人及び企業はカンボジアで土地を保有出来ない旨明記されています。例外的に、外国人又は企業がカンボジアで土地を使用するには以下の方法があります。
(1)クメール資本51%以上の合弁会社を購入主体とする
(2)クメール国籍の方と結婚し、配偶者を購入主体とする
(3) 7年間の移住後、カンボジア国籍を取得する
などの方法があります。

2 問題のある土地を購入しないよう、細心の注意を払う必要があると言えます。土地の購入に際して、どのようなことに注意すればいいのでしょうか?
 第一点目として、土地所有者の権利書が所有権利書(HardTitle)なのか、それとも占有権利書(SoftTitle)なのかを確認する必要があります。
 そもそも、所有権と占有権の違いをはっきりさせる必要があります。所有権者は土地の使用・収益・処分行為を行う権限を有する者のことです。当然土地を売却することも出来ます。その一方、占有権利者とは実際に占有を行う者のことで、事実上土地の売却は可能なものの、(土地売却に関して)無権利者の可能性もあるので法的には不安定な権利といえます。
 二点目は、土地に関する書類確認後、必ず実際の土地の状況を確認する必要があるということです。購入予定の土地に明確な境界線はあるか。これら十分に確認せず、土地を購入してしまうと後々の紛争の原因となってしまいます。

 三つ目は、土地上に何かしらの権利義務関係が存在していないかを事前に確認することです。これは意外に見落としやすい点なのですが、その土地に「第三者の担保権」「第三者の賃貸権」「裁判所による販売禁止決定」等の権利義務関係が存在していないかを確認することは非常に重要です。
 そして最後に、発展途上国ならではの注意点が存在します。それはその土地が政府の開発プロジェクトエリアに含まれていないか、ということです。ここカンボジアは目まぐるしい勢いで開発が進んでいるので、そのようなリスクが少なからず存在しています。
以上、上記の四つの注意点が土地を購入する際のポイントになるのではないでしょうか。

3 それでは、土地選定後、どのような形であれば土地の売買契約が有効かつ適法に行われるかを早速確認してみましょう。
 まず、契約締結者が十分な権限を有しているかを確認する必要があります。
 そこで重要なのが、売手が自然人か、それとも法人かということです。
自然人の場合、もしその土地が共同財産である場合、持ち主全員の署名が必要となります。
一方、売手が法人の場合、取締役会及び株主の正式な承認を得ているかが問題になります。
 また、土地の売買契約を締結した後、売主の権利が所有権なのか占有権かで、その後の手続きが大きく違ってきます。
 所有地の場合、両当事者は証人を用意し、地方権力者の認知が行われます。その後、地籍事務所に契約書を提出し、正式な手続き・登録が行われます。その一方、占有地の場合は両者の契約のみですので、こうした手続き・登録が行われません。
 制度が不安定なカンボジアの現状においては、土地購入に際しては、以上のような様々な状況を勘案しながら、土地の選定、契約には細心の注意を払うことをお勧めします。

藪本 雄登 (やぶもと ゆうと) 
カンボジア法整備の新たな担い手になるべく、カンボジアで法律コンサルティング事業を開始。民間主導の新たな法整備支援のあり方を模索中。専門は、東南アジア法、国際労働法。